香川県の漆芸は、江戸時代末期に玉楮象谷がその礎を築いて以来、象谷の三男・雪堂や孫の蔵谷らに受け継がれ、その後次第に広がりを見せていきました。その販路は、近代に入って中国地方や関西に及び、なかでも石井磬堂が職長格として携わった讃岐彫の店舗「百花園」の販売はよく知られており、倉敷周辺にも多く伝わっています。
また、象谷は門人たちとともに岡山の地を訪れ、彫物や漆芸の技法を伝え、総社の池上蔵六らに影響を与えました。蔵六は同郷の亀山北峰たちにその技を伝え、その流れは大野昭和斎にまでつながっています。
さらに、現在の高松市で生まれた磯井如真は、蒟醤(きんま)の点彫りを考案するなど讃岐の漆芸に新風を吹き込み、岡山の難波仁斎や児島の山本象石は、如真と交友あるいは師事することにより感化を受けながら研鑽に励み、山口松太は仁斎から漆芸の技術を学んでいます。
一方、近代岡山の木竹工の先駆者である逸見東洋は、明治維新後にその技術を活かし茶合や丸盆などをつくりました。特に煎茶の流行に伴い、茶道具はもてはやされ、その技術は東洋に師事した神崎軒水、軒水に学んだ平賀石泉へと伝えられていきました。刳物技術において第一人者である林鶴山は、石泉や北峰が彫物を施した盆などの木地を手掛けています。
本展は、讃岐の地で玉楮象谷らによって生み出された技術が岡山にもたらされ、その遺作が倉敷周辺に数多く残ることを確認するとともに、名工たちによって今日まで伝えられてきた“ものづくり”の伝統を、初公開作品を多数含む漆芸と木工芸の作品によって紹介するものです。
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●記念講演会
終了しました。
「讃岐漆芸-玉楮象谷を中心に-」
12月19日(土)14時~15時30分
●担当学芸員によるギャラリートーク
終了しました。
12月13日(日)、2016年1月17日(日)
14時~