倉敷市立美術館の核となっているのは、8,000点を超える郷土出身の日本画家・池田遙邨の作品ですが、本館が収蔵する日本画は遙邨以外にも多彩です。
その多くは市民はじめ所蔵されていた方々からの寄贈によるものです。備中地域には戦災に遭わず焼失を免れた旧家が多く、たとえば倉敷市阿知の林源十郎邸に伝わっていた美術品は一括して本館に収蔵されています。この中には、林家の近くで病没した江戸時代末期の勤王画家・佐藤正持が描いた遊楽図や、1891(明治24)年に阿智神社に画神碑を建立するために来倉した京都の南画家・田能村直入の山水画の大作など、それぞれの作家の基準作となる貴重な作品が数多く含まれています。
また、江戸時代から続く旧家で、明治時代、洋画の黎明期に活躍した堀和平を輩出した総社の堀家からの寄贈品には、京都の大和絵系の画家で、倉敷市曽原の一等地に襖絵を揮毫した原在謙が描いた屏風などがあり、当時のしつらえの一端をうかがうことができます。
由加山蓮台寺が所蔵する「菊慈童図」は、狩野永徳や長谷川等伯と並んで桃山時代を代表する画家・海北友松が50歳前後のときに描いた作品です。友松は1598(慶長3)年に石田三成に同行して海路九州へ向かい、その途上蓮台寺に近い倉敷下津井に滞在しています。本作は友松研究において大変重要な作品で、今回がひさかたぶりのお披露目となります。
このたびの展示は、人物画・花鳥画・風景画といったジャンル別に構成し、本館コレクションに寄託品を加えた約30点により、郷土ゆかりの日本画家たちのすぐれた作品を紹介します。
●担当学芸員によるギャラリートーク
12月4日(土)14時から30分程度。
※当日の観覧券が必要です。