人権問題って何?

人権問題って何?

倉敷市が重点的に取り組む人権課題

倉敷市人権政策推進計画」第3章には,倉敷市が重点的に取り組む人権課題が明記されています。

 1.   男女共同参画社会

 2.  子ども

 3.  高齢者

 4.  障がい者

 5.  同和問題

 6.  外国人

 7.  感染者・患者等

 8.  インターネット

 9.  平和事業の推進

 10.さまざまな人権課題

1. 男女共同参画社会

「男女共同参画社会基本法」の理念に基づき,男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され,もって男女が均等に政治的,社会的及び文化的利益を享受することができ,かつ,共に責任を担うべき男女共同参画社会の実現をめざして,平成13年4月に「倉敷市男女共同参画基本計画」を策定し,男女共同参画施策を推進してきました。

しかし,人々の意識や社会慣習の中に,「男は仕事,女は家庭」「男だから,女だから」といった固定的性別役割分担意識や偏ったジェンダーがいまだ根強く残っており,男女共同参画社会の実現を困難にする大きな要因になっています。こうしたことから,引き続き,総合的かつ計画的に施策を進める必要があります。

また,ドメスティック・バイオレンス(DV)については,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が平成19年に改正されたことに基づき,平成21年3月に「倉敷市ドメスティック・バイオレンスの防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本計画」を策定し,DV防止と被害者支援に向けた施策を推進しています。

しかし,DVの相談件数は年々増加しており,暴力の背景には子どもへの虐待などが内在している場合もあり,複雑化・深刻化するなど,より一層,DV防止と被害者支援のための取組が必要です。

2.子ども

我が国の母子保健は世界最高水準にあるといわれています。その一方で,核家族化の進行や仕事を抱えての育児,経済状況の悪化などに伴い,育児の負担が母親一人に過大に偏り,育児不安が増大したり,母親が社会的に孤立することが考えられます。こうした要因を背景に子育てに不安を抱く母親や適切な養育が受けられない子どもが増加しています。

このような状況の中,子どもに関する相談体制の充実や,子育て支援のための取組が進められています。平成12年には「児童虐待の防止等に関する法律」が施行され,児童虐待の早期発見・早期対応に努めており,政府は3年ごとに見直しを行い,児童虐待防止対策の強化が図られています。

学校教育においては,子どもの発達段階に即しながら,学校教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高め,一人ひとりを大切にした教育の充実をめざしています。

しかしながら,近年,いじめや不登校,児童虐待,非行の低年齢化など,子どもをめぐる多くの問題が生じています。

学校教育は人間形成のための大切な場であり,その教育の場が人権尊重の考え方を基本において推進されることによって,一人ひとりの人権尊重の理念についての正しい理解と実践力が身に付いていくことになります。この面からも,学校教育の充実が大切になっています。

 

3.高齢者

我が国の高齢化は世界に例を見ない速さで進み,総務省統計局「日本の統計2010」によると,高齢化率は上昇を続け,2035年には33.7%と国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。高齢社会を明るく活力に満ちたものとしていくためには,高齢者自身が社会の中で積極的な役割を果たし,生きがいを持って生活ができるような環境を整備することが重要です。

しかし,高齢者の増加に伴い,介護が必要な状態になる高齢者も増加し,核家族化の進行や女性の社会進出などの要因により,高齢者を取り巻く環境も変化しています。また,ひとり暮らしや高齢者のみの世帯が増加傾向にあり,家庭内における介護力も著しく低下しています。

このような中,平成12年から開始された介護保険制度は,平成18年の介護保険法の大幅な改正により,これまでの「介護重視型」サービスから「予防重視型」サービスへの転換や地域密着型サービスの開始などが図られました。また,健康長寿を推進していくためには,高齢者を対象とした幅広い施策を充実させ,介護が必要な状態になることをできる限り防止することが求められています。また,年々増加している高齢者虐待への対応や認知症対策などを含め,高齢者が安全で快適な生活ができるよう生活環境の整備を図る必要があります。

本市においては,こうした高齢者福祉政策を取り巻く状況の変化や高齢社会における諸課題に対応するため,「倉敷市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」により,保健福祉サービスの提供目標量を設定し,介護予防や生活支援,生きがい,健康づくり事業などを年次的に実施し,また地域密着型サービスなどの施設整備も行っています。

今後,増大,多様化が予想される市民ニーズを的確に把握するとともに,人権の視点に立った高齢者施策の展開が必要です。

 

4.障がい者

障がいのある人を取り巻く状況は,障がい福祉サービスの一元化などを柱とした平成18年の「障害者自立支援法」の施行を契機としてめまぐるしく変動しています。応益負担等への批判を受けて設置された障害者制度改革推進会議の議論により,平成23年には「障害者基本法」が改正され,平成24年の「障害者虐待防止法」施行,そしてこのたびの「障害者総合支援法」など,さまざまな制度の見直しが行われてきました。

本市においては,「ノーマライゼーション」の理念の下,障がい者を取り巻くさまざまな課題に対応するため,平成21年3月に策定し,5年ごとに見直している「倉敷市障がい者基本計画」や,3年ごとに見直している「倉敷市障がい福祉計画」に基づいて,障がい者が施設入所・入院の状態から,必要なサービスを受けつつ住み慣れた地域で自立した暮らしができるように,障がい者の不安を取り除くための地域相談支援体制の確率を図ってきております。

しかし,「倉敷市障がい者基本計画」の策定に当たって実施した市民アンケートの結果では,「地域において障がい者に対する差別や偏見を感じる」「企業や社員の障がいに対する理解不足がある」「障がい者にとって外出しにくい雰囲気がある」などの意見が寄せられており,障がい者が地域社会の中で自立した生活を営んでいくためには,障がい者へのさらなる理解が必要となっています。

特に障がい者の地域生活への移行においては,その居住地域における住民やあるいは就労先の企業及び従業員への,障がいに対する理解が重要であることから,地域社会全体として障がい者に対する理解をより深めていくための啓発・広報活動を一層進めるとともに,障がい者の権利を擁護する方策が求められています。

 

5.同和問題

日本社会の歴史的発展の過程で形づくられた身分的差別により,一部の人々が,職業や居住,結婚,服装を制限されるなど,長い間,経済的,社会的,文化的に低い状態に置かれることを強いられていました。明治4年,太政官布告(賤民廃止令ともいわれる)によって,制度上の身分差別はなくなったにもかかわらず,今なお,理不尽な差別を受けるなど,人権が侵害されることがあります。これが我が国固有の人権問題である同和問題です。

昭和40年の同和対策審議会答申では,「同和問題の解決は国の責務であり,同時に国民的課題である」と位置付けられました。この答申を受けて昭和44年に制定された同和対策事業特別措置法など一連の「特別措置法」の下,国と地方公共団体は,「特別対策」を推進してきました。33年間にわたる取組により,生活環境の改善・整備をはじめとしてハード面での較差は大きく改善され,また,差別意識解消に向けた教育や啓発もさまざまな創意工夫の下に推進されてきました。こうした状況を受けて,平成14年3月末で,「特別対策」による事業はすべて終了し,その後同和問題の解決は必要に応じて一般施策で取り組んでいます。

しかし,同和問題における偏見や誤った認識は依然として存在しています。結婚における差別,差別発言,インターネット上での差別書き込みなどの差別行為に加え,「えせ同和行為」など差別を助長する動きも発生しており,同和問題については,なお解決すべき課題が存在しています。

同和問題の解決に向けた中核的施設として位置付けられてきた隣保館は,各種の事業を行い,地域住民の生活改善や人権意識の高揚等に大きく寄与してきました。

現在では,隣保館は,広く地域社会全体の中で,福祉の向上や人権啓発のための住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして,国の補助を受けてさまざまな交流事業や啓発活動を展開しています。

市内には,倉敷民主会館,玉島池畝会館,児島民主会館,水島会館,真備人権ふれあい館の5つの隣保館があります。

 

6.外国人

経済をはじめとするさまざまな分野でボーダレス化,グローバル化の流れは地方にも及び,地域で暮らす外国人は年々増加しています。

市内の外国人登録者数は,5千人を超えており,その4割近くが在日韓国・朝鮮人となっています。

一方,留学や就労を目的に来倉する中国人,ブラジル人,フィリピン人も増加しています。こうした状況の中,倉敷市第六次総合計画に基づき,国際交流を進めるとともに,在住外国人や外国人観光客にやさしい多文化共生のまちづくりをめざします。

しかしながら,地域社会や雇用の場などにおいて,日本人と外国人との間で言語,文化,生活習慣,価値観などの相違によるさまざまな問題が生じています。

今後とも市内に居住する外国人の数は増加していくことが予想され,国籍,言語,文化,宗教,生活習慣などが異なる人々と,多様性を認め合いながら,互いに尊敬し安心して暮らすことのできる多文化共生社会の実現に向けた取組を進める必要があります。

 

7.感染者・患者等

新たな感染症の出現や国際交流の進展など感染症をめぐる状況の変化や,感染症患者に対する偏見や差別が存在することを重く受け止め,平成11年には「伝染病予防法」「性病予防法」「エイズ予防法」を廃止し,患者の人権に配慮した受信推奨・入院勧告等の措置が盛り込まれた「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行されました。その後,平成19年には「結核予防法」を廃止し,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に統合されました。

ハンセン病回復者やHIV感染者,エイズ患者をはじめとする感染者・患者等については,病気に対する知識の不足による偏見や差別が少なくないことから,正しい知識の普及・啓発と広報活動,情報の提供などが重要です。特にハンセン病は,らい菌の感染によって発病する感染力の極めて弱い感染症であり,感染しても発病する可能性は極めて低く,また発病しても治療により短期間で治癒する病気です。こうした正しい知識によらず,「ハンセン病は容易に感染する病気である」など間違った認識により,患者・回復者・家族などへの差別がいまだに残っています。こうした差別に加え,後遺症や高齢などの理由で多くのハンセン病回復者が現在でも療養所において生活をされています。

 

8.インターネット

インターネットの普及や携帯電話,スマートフォンなど情報端末の多様化をはじめとした利便性のめざましい向上により,多くの人々が豊かな生活環境を享受することができるようになりました。

一方,発信者の匿名性を悪用して,ホームページや掲示板に他人を誹謗し中傷するような書き込みが行われるなど,人権が侵害される事案が発生しています。

このため,インターネットのホームページや掲示板などで人権の侵害があった場合におけるプロバイダやサーバの管理・運営者などの「損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利」を定めた「プロバイダ責任制限法」(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が,平成14年に施行されましたが,被害者が特定されない情報などは同法の対象外となっており,なお不十分な状況が続いています。

 

9.平和事業の推進

戦争は市民の生活を根底から脅かすものであり,平和な世の中は,すべての人々の人権を保障するための必要条件です。

しかしながら,現在,平和と豊かさが当然のこととして受け止められ,また,悲惨な戦争の記憶が次第に失われ,次世代への継承もできにくくなっています。

地域紛争やテロなど平和な社会の実現を妨げる事態も後を絶ちません。

人権が真に尊重される社会を実現するためにも,戦争の無意味さや,平和の尊さを認識するとともに,平和の大切さを次世代に伝えていく必要があります

10.さまざまな人権課題

(1)犯罪被害者等

犯罪被害者やその家族または遺族は,犯罪等による直接的な被害にとどまらず,その後もプライバシーの侵害や名誉毀損などの二次的な被害に苦しめられることも少なくありません。

そのため,犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とした「犯罪被害者等基本法」は平成17年に施行されました。さらに,関連する法律の改正が行われ,犯罪被害者等に対する配慮や保護などの支援体制が改善されてきました。

このような,制度面での改善だけではなく,市民一人ひとりが犯罪被害者等の置かれた状況を理解し,人権に配慮していくことが求められています。

 

(2)刑を終えて出所した人

刑を終えて出所した人その人やその家族に対して,根強い偏見や差別が存在します。

そのため,本人に更生意欲があっても,就職や住居の確保が困難なため社会復帰の機会を失い,生活に行き詰まる場合があります。また,社会に復帰する努力を重ねているにもかかわらず,悪意のあるうわさの流布などにより本人の意欲がそがれ,更生そのものが阻害される場合もあります。

このように,刑を終えて出所した人が社会の一員として円滑な生活を営むには,現実は厳しい状況にあります。

 

(3)性同一性障がい

自分の体の性と心の性が一致しないため,社会生活に支障をきたす人がいます。性同一性障がいの人々です。

平成16年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され,一定の条件を満たした場合には,家庭裁判所の審判を経て,戸籍の性別変更が認められることになり,平成20年には,その条件を緩和する法改正も行われました。

一方で,性同一性障がいの人が就職やアパートへの入居の際に,外見と性別が食い違っていることを理由に断られるなどの不利益を受けることがあり,生活していく上でさまざまな障壁があります。

 

(4)性的指向に係る問題

性的指向とは,性的意識や恋愛感情が同性に向くのか異性に向くのかという,人間の性に係わる意識や感覚のことです。

私たちの社会は「異性愛者しかいない」という前提で成り立っており,同性愛者や両性愛者自身が自分の性的指向やそれに基づく自己の存在を大事にし,生き方の自己選択や自己決定ができるような社会環境が十分に整っていないという問題があります。

また,同性愛者や両性愛者に対する偏見が払拭されておらず,人権侵害が生じているという問題があります。

 

(5)ホームレスの人々

さまざまな理由から,ホームレスになることを余儀なくされている人がいます。その中には,きちんと就職して自活したいという意志を持った人も多いのですが,外面的な理由から偏見や差別の対象になっていることがあります。

また,ホームレスの人々に対して度々暴行事件が発生しており,その根底には,ホームレスの人々を軽視する姿勢が見受けられます。

平成14年に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(ホームレス自立支援法)が施行され,ホームレスの人々の自立を支援するため地方公共団体が就労機会や住居の確保,生活相談などの対策を行うよう定められました。また,国民の責務として,ホームレスの人々について理解を深めるとともに,地域社会においてもその自立支援等に努めることが求められています。

 

 

この他にも,北朝鮮当局による拉致問題や日本に帰国した中国在留邦人とその家族の問題,アイヌの人々への偏見や差別,人身取引や自殺,東日本大震災に起因する偏見や差別などの人権問題があります。

今後新たに発生する人権問題についても,正しい知識と理解を深め,問題解決に向けた啓発活動を中心に取り組んでいきます。

 

※各課題への倉敷市の基本方針・具体的施策の方向については,『倉敷市人権政策推進計画「第3章 課題別施策の推進」』をご覧ください。

 

〈リンク〉

啓発活動年間強調事項(法務省ホームページ)