満谷 国四郎「長崎の人」
1916(大正5)年
91.3×116.8cm/油彩・キャンバス
作品解説
本作は、長崎市に住んでいた郷土史家・永見徳太郎の肖像画で、第11回文展に出品されました。モデルになっている永見は長崎市の旧家の生まれで、南蛮美術を中心とした収集家として、また芥川龍之介や竹久夢二ら多くの文化人と交友があったことでも知られています。満谷国四郎が永見に宛てた手紙からは、満谷が酒席でもてなされたり永見夫妻と花札に打ち興じるなど、両者の親しさがうかがえます。この作品では、グラスを手にくつろいだ雰囲気でソファにもたれる永見のまわりに、タピストリーと思われる古地図やギヤマンといった異国情緒あふれるモチーフが描かれ、いかにも南蛮美術を収集しているコレクターの肖像にふさわしい小道具が揃えられています。ところで、手前のテーブルにさりげなく置かれたワイングラスは、一体誰のためのものでしょうか。永見はすでに片手にグラスを持っています。満谷は親しみを込めて自分自身の存在をグラスに託して描いたと思われます。二人の交友の深さを物語る作品といえるでしょう。
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