環境美化のつもりで行われる河川やため池などへのコイの放流や、そこにいなくなってしまったメダカやホタルなど身近な生き物に再びふれ合いたいという思いから、他の地域から持ってくる『善意の放流』が行われることがあります。
その場所にすむ生き物たちは、その環境に体や生活の仕方が合っていたり、その地域で起こりやすい病気や、その地域にいる天敵への対抗力を持つことなどから、今まで生き残っているのです。また、同じ種類の生き物でも、すむ場所により少しずつ異なる個性(遺伝子)を持つため、他の地域から持ち込んだものがその場所に合わせて生き続け、子孫を残し、いのちをつないでいくことができるかどうかわかりません。
そのため、生き物たちの放流や移植を続けるたびに、結果として、死んでしまう生き物たちを増やしていくだけになるかもしれません。
生き残った場合も、その場所にもともとすんでいる別の生き物を食べてしまったり、棲み家や食べ物を奪ったり、交雑を起こしてしまったりなど悪い影響を及ぼしてしまうかもしれません。他の地域の生き物を善意でも安易に野外に放つことは、慎んでください。
また、生き物たちの放流、移植などについては、ガイドライン、指針等がいくつかの学会、団体より出されています。参考として、以下に示します。
生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提言(2002,日本緑化工学会)
生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン(2005,日本魚類学会)
倉敷市では、生物多様性の保全に対し影響の大きい外来生物について、調査、対策、啓発を進めるなど様々な施策を行っています。
また、それら影響が大きいとされる生物でなくても、野生生物を自己の移動能力を越えて人為的に移動させることは、生態系や地域の生き物の遺伝的な特性、あるいは移植等の事後の環境に予期せぬ悪影響を及ぼす可能性があると考えています。
このため、生態系の上位種の生き物はもちろん、それらのエサとなる生物類についても人為的な移殖を推奨していません。
豊かな自然の象徴となる生き物たちの生息域が市内各地に広がることは、望むべきことですが、それらが生息できる環境が、市民と倉敷市に係わるみんなの協力によって広がり、それに従って自然に生き物たちと出会える場所と機会が増えていくことが望ましいことであると考えています。