INTERVIEW 02
モトヤユナイテッド株式会社
代表取締役社長 小野 新太郎 氏
この町が元気になるような新たな価値を創造し、自ら行動する集団。
第1回座談会報告
ーーー会社の成り立ちについてお話いただけますか。
1948年に「元屋」という小さな商店から創業し、70余年を迎えました。創業当時からの先代の「この町で暮らす人々が、元気になるものをお届けしたい」という想いを受け継ぎ、これまで建設資材販売、自動車教習所、不動産事業、飲食店などさまざまな事業を展開してきました。その想いが次々と実を結び、現在は、ビジネスマネジメント事業、エデュケーション事業、フード&カルチャー事業、インベストメント事業、プロパティ事業・クリエーション事業の6つの事業を展開しています。
ーーー顧客・従業員・社会の価値創造を追求しています。
サービス業を中心に発展したきた会社なので、 売り上げに対して従業員数が多いこともあり、従業員のモチベーションや感情がダイレクトに社風や業績にも反映されます。それだけに、以前から「人を生かす」「人に優しく向き合う」など人に重点を置く経営を進めてきました。
特にここ数年は、会社KGIを会社の最も重要な経営指標としています。KGIとはKey Goal Indicatorの略語で、「重要目標達成指標」を意味します。今や数千社の企業が導入している指標ですが、売上げ・利益はもちろんのこと、エンゲージメントスコアという従業員との信頼関係をスコア化したものを重要な経営目標としています。
社員とのエンゲージメントを高め、
全員が当事者として動く。
導入してからずっと50を切る40台半ばだったのですが、直近の最新データでKGIが73.6に上昇しました。大学に例えれば早稲田・慶応といったトップクラスに入ってきたようなイメージです。とはいえ課題も残されていますので、決してその結果に甘んじているわけではありません。ただ私自身、すごく経営がしやすくなったと実感しています。これは、従業員が会社の目指す方向性や行っていることをポジティブに捉えてくれていることの表れだととらえています。
ーーー具体的にはどういう取り組みをしてこられたのですか。
課題というのは、事業会社や組織ごとにそれぞれ異なるので、全体としての課題と、職場ごとの課題をまずヒヤリングします。一人一人に向き合って、膝を突き合わせて話をして、現場のアイデアに耳を傾けながら、業務改善に本気で取り組んでいます。生の声を聞くことで、我々経営陣自身も手を動かし、体を動かし続けていますね。
エンゲージメントというのは、会社が一方的に従業員のために何かをする従業員満足度向上策とは違い、現場の社員みんなが、自分たちの会社を働きがいのある場にするためにはどうすればよいかを考えます。それを繋げていくのが我々経営陣の役目で、一人一人が当事者意識持ってやることの重要性も、私から定期的にメッセージしています。
ーーーしっかり声を聞き、伝えることは大切ですね。
定期的にランチミーティングを行っています。当社は社内行事での交流も多いですし、普段から朝礼や研修、日常の業務内、オンライン、ウェブの社内報などさまざまな機会やツールを使っています。ランチミーティングでは、プライベートな趣味の話や人となりがわかるような話題もフランクに交わしていますし、社員に知ってもらいたい業務の話もします。たとえば今どんな事業が進んでいるのか、社長は何を考えて経営しているのか、会社の理念とは?など、その時々のテーマを決めて話し合っています。
自ら手を挙げる文化が
「チャレンジしたい気持ち」を支える。
ーーーフランクなコミュニケーションで皆さんのモチベーションが上がり、事業展開につながっているのですね。どう進めるかの提案については?
実行に移す際には、能力や社歴を重視するというより、自ら手を挙げて「やりたい」という人を中心にプロジェクトメンバーを決めています。社内にさまざまな委員会があるのですが、たとえば「SDG’s委員会」の各分科会では、環境に配慮した新規事業を見出したり、障がい者雇用をいかに推進するかを検討したり、制度改革によってどのような働き方を導入できるかを考えたりしています。その各メンバーは、全員自ら手を挙げた人たちです。なかには入社1年目の従業員もいますよ。
ーーー率先して取り組む文化が育っているのですね。社内での信頼関係もベースにあると感じます。
手を挙げる人ばかりではなく、まだまだ「現状維持バイアス」が強い人がほとんどです。けれども、経営者や組織が心理的安全性を担保してあげて、新しいことにチャレンジできる風土を作ってあげることを意識しています。失敗が許される、チャレンジすることが褒められ、きちんと評価されるという安心感があれば、従業員も「失敗してもいいんだ。じゃあやってみたい! チャレンジしてみたい!」という意識が生まれると思います。
プロジェクト全体の流れはもちろん私がすべて把握し、決断しますが、一旦スタートすれば分科会ごとのリーダーがリーダーシップを取って行動できるよう意識しています。実際に、現在進んでいるプロジェクトでも、毎月リーダーから報告を受けて、私がアドバイスをしたうえで承認するという形をとっています。
ーーー明るくオープンな社風は、中期経営計画の行動テーマ「DO THE LOCOMOTION」にも表れていますね。意図することとは。
はい。「LOCOMOTON」には運動力、機関車という意味がありますが、我々の世代だとサザンオールスターズの「いなせなロコモーション」、少し若い世代だと、オレンジレンジの「ロコモーション」などの楽曲にも使われているので、ピンとくる方も多いと思います。ていて、ノリよくアップテンポなイメージにちなんで、「大きな目標に向かって! 一度きりの人生、仕事もプライベートも楽しくハッピーに」という意味を込めました。会社の目標であっても堅苦しくなく、自分ごととして受け止めてもらいたくて決めたテーマです。
また企業理念には、「永続的な成長と繁栄のために行動する」の言葉を入れています。成長し続けないと、やはり企業は衰退してしまいます。「現状維持でいいだろう」と落ち着いてしまうと、会社の意気は一気に下がってしまうので、 常に上を向いて高い目標を立ててやっていこうよと。みんなで楽しみながら、ワイワイお祭りみたいに目標に向かおうという雰囲気は、意識して作っていますね。
ーーー社内でのコミュニケーションがとても円滑ですが、求める人材像については。
業務内でも仕事以外のコミュニケーションも取る。その方がいろいろなやり取りも円滑になりますし、仕事以外のことを仕事の仲間とする、知るっていう文化に共感してくれる人が望ましいですね。社内行事も多いのですが、それを一緒に楽しんでくれる仲間と、同じ価値観の人が集まることを大事にしています。採用の時点でも、そこは理解していただいたうえで入社してもらっています。
ーーートライ&エラーにより得たことは。乗り越えた事例があれば教えてください。
当社も70年の歴史の中で、もちろん多くの失敗がありました。最近ではコロナ禍で、やめたり撤退したりした事業もあります。けれども、それだけ打席に立つ回数が多いというか数打っているということを大事にしたい。物事100発100中はありえません。チャレンジには質も量も必要ですが、とにかく量行動することですね。好奇心旺盛にチャレンジすることを楽しんでいます。
コロナ禍では大変な困難もありましたが、融資を受けるなどして乗り切り、逆にCVC事業=コーポレートベンチャーキャピタル事業といって、ベンチャー企業への投資事業を始めました。ニュービジネスに参入してチャンスを得たいという思いから、国内外のベンチャー企業15社に投資をしていまして、ロボットベンチャーの会社と共同でロボットオペレータースクールを立ち上げたり、インバウンドの会社と、古く使われていない町屋をホテルにコンバージョンするなど、続々と新規事業をスタートさせています。コロナ禍の苦境の中でも歩みを止めず動いていたことが、少しずつ実を結びつつあるのは喜ばしいことです。
INTERVIEW
代表取締役社長 小野新太郎氏
PROFILE
1978年倉敷市生まれ。
2001年モトヤユナイテッド入社、2015年代表取締役に就任。
地域にインパクトを与える経営人材輩出企業を創り、地方から新たな価値を世界に向けて発信するべく、日々奮闘しております。
袖触れ合うも多生の縁。人とのご縁は必然だと考えています。趣味はカレーとサーフィン。
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