一般的に小作地というと、賃借権の設定をされている農地を指すことが多いのですが、ここでは賃貸借と使用貸借についてまとめてみます。
賃貸借は民法に「賃貸ハ 当事者ノ一方カ 相手方ニ或物ノ 使用及ヒ 収益ヲ為サシムルコトヲ約シ 相手方カ 之ニ其賃金ヲ払フコトヲ 約スルニ因リテ 其効力ヲ生ス」(601条)とあります。
また、「不動産ノ賃貸借ハ 之ヲ登記シタルトキハ 爾後其不動産ニ付キ 物件ヲ取得シタル者ニ対シテモ 其効力ヲ生ス」(605条)とありますが、農地等の賃貸借は「農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があったときは、これをもって物件を取得した第三者に対抗できる。」(農地法第19条)とされています。
使用貸借は民法に「使用貸借ハ 当事者ノ一方カ 無償ニテ 使用及ヒ 収益ヲ為シタル後 返還ヲ為スコトヲ 約シテ 相手方ヨリ 或物ヲ受取ルニ因リテ 其効力ヲ生ス」(593条)とあります。
使用貸借の特徴は、借主の目的物に対する使用収益機能は、貸主に対してのみ請求できる債権として機能するだけで、貸主以外の第三者に対して主張できず、借主の死亡によって契約は終了します。
【戦前からの賃貸借契約について】
農地法改正で,農地法から「小作」という言葉は削除され現在は“戦前からの賃貸借権”と言います。農地法改正前は,「所有権以外の権原に基づいて,農地を耕作に利用すること」全般を「小作」と呼んでいました。この「小作」については,昭和21年に施行された自作農創設特別措置法による農地改革により地主制度から自作農地に移行していますが,この時に地主制度が残っているのがいわゆる「小作権」と言われるものです。
農地の貸し借りには,農地法第3条の許可が必要ですが,この許可を受けていないものを「闇小作」といい,一般的には無許可での賃貸借のことです。農地法は,小作を保護していますが,「闇小作」は保護されていません。相続評価において,実際に耕作権が設定されているつもりでも,農業委員会の農家台帳に記載がなければ,原則的には闇小作となってしまいます。闇小作でも,長年の実績と証拠や,当人同士の確認があれば,「小作」として認められます。
【小作の台帳の流れ】
(1)昭和14年に国家総動員法第19条の規定により小作料統制令が出る。(高額な小作料の収受を防止し,耕作者にその労働の成果を享受されその地位の安定を図るため,小作料の最高額を制限。)
(2)小作料最高額の決定は,農業委員会から岡山県知事に対して許可申請を行って許可を得たうえで小作料の決定を行うこととなる。
(3)この申請時に農業委員会が所管の小作を取りまとめ一覧にして県知事に対して許可申請を行って,許可を得た小作権が小作台帳として残っている。
※小作台帳に登録がない小作権については,農業委員会から小作台帳に登録を行っていただくようにお願いをしております。